2017/05/26
改正FIT法とは
平成29年4月1日に施行された新しい電力固定買取制度のことです。
こちらの記事では主に太陽光発電に関連する手続きや義務について解説いたします。
改正FIT法の趣旨
平成24年に施行された電力固定買取制度「FIT法」により、再生可能エネルギーの普及率は飛躍的に増大致しました。
しかしその反面、買取費用による国民負担の増加、未稼働案件の増加、近隣トラブルなど様々な問題が発生しています。
そこで適切な発電事業を推進する為の見直しとして、新たな手続きと義務が設けられました。
改正FIT法で見直された重要な変更点
こちらの項目では新たに定められた、手続きと義務を一覧で紹介いたします。
新規太陽光発電所案件
– | 手続きの名称 | 提出期限 |
---|---|---|
1 | 新認定制度の新規手続き | 随時受付 |
2 | 事業計画の提出 | 2017年4月1日以降で、認定日の翌日から9ヶ月以内に電力会社と接続契約を締結した場合は『接続契約の締結日から6ヶ月以内』 |
平成29年3月31日以前に認定を受けている発電設備
– | 手続きの名称 | 提出期限 |
---|---|---|
1 | 新認定制度への移行手続き | 旧制度で認定を取得している場合は『2017年9月30日まで』 |
2 | 事業計画の提出 | 旧制度で認定を取得している場合は『2017年9月30日まで』 |
新しい義務
– | 義務の名称 | 詳細と期限 |
---|---|---|
1 | 保守管理・メンテナンス | 保守点検及び維持管理に係る実施計画を策定し、事業実施期間にあたって保管しなければいけません。 |
2 | 標識掲示 | これから着工予定の太陽光発電所は、土地の開発・造成の工事開始後速やかに掲示する。 平成29年3月31日以前に認定を受け、運転開始済みの太陽光発電所は改正FIT法施行日より1年以内。 |
3 | フェンスの設置 | これから着工予定の太陽光発電所は、運転開始後速やかに設置する。 平成29年3月31日以前に認定を受け、運転開始済みの太陽光発電所は改正FIT法施行日より1年以内。 |
フローチャートでわかる!あなたに必要な手続きと義務
あなたが所有する発電所の状況によって 、取るべき手続きと義務は異なります。
そこで新手続きと義務タイプを、フローチャートで5つに分類致しました。
Aタイプの方に必要な手続きと義務
– | 手続と義務の名称 | 詳細と期限 |
---|---|---|
1 | 事業計画 | 旧制度で認定を取得している場合は『2017年9月30日まで』 2017年4月1日以降で、認定日の翌日から9ヶ月以内に接続契約を締結した場合は 『接続契約の締結日から6ヶ月以内』 |
2 | メンテナンス | 保守点検及び維持管理に係る実施計画を策定し、事業実施期間にあたって保管しなければいけません。 |
3 | フェンス | これから着工予定の太陽光発電所は、運転開始後速やかに設置する。 平成29年3月31日以前に認定を受け、運転開始済みの太陽光発電所は改正FIT法施行日より1年以内。 |
4 | 標識掲示※ | これから着工予定の太陽光発電所は、土地の開発・造成の工事開始後速やかに掲示する。 平成29年3月31日以前に認定を受け、運転開始済みの太陽光発電所は改正FIT法施行日より1年以内。 ※20kW未満の太陽光発電所は任意の設置となります。 |
Bタイプの方に必要な手続きと義務
Cタイプの方に必要な手続きと義務
– | 手続と義務の名称 | 期限 |
---|---|---|
1 | 事業計画 | 旧制度で認定を取得している場合は『2017年9月30日まで』 2017年4月1日以降で、認定日の翌日から9ヶ月以内に接続契約を締結した場合は 『接続契約の締結日から6ヶ月以内』 |
2 | 接続契約 | 随時受付 |
3 | メンテナンス | 保守点検及び維持管理に係る実施計画を策定し、事業実施期間にあたって保管しなければいけません。 |
4 | フェンス | これから着工予定の太陽光発電所は、運転開始後速やかに設置する。 平成29年3月31日以前に認定を受け、運転開始済みの太陽光発電所は改正FIT法施行日より1年以内。 |
5 | 標識掲示※ | これから着工予定の太陽光発電所は、土地の開発・造成の工事開始後速やかに掲示する。 平成29年3月31日以前に認定を受け、運転開始済みの太陽光発電所は改正FIT法施行日より1年以内。 ※20kW未満の太陽光発電所は任意の設置となります。 |
Dタイプの方に必要な手続きと義務
Eタイプの方
特例太陽光に該当する方
太陽光の余剰買取制度の適用を受けて固定価格買取制度へ移行された設備を特例太陽光発電設備とし、事業計画書の提出が免除されます。
また他の設備設置義務も、免除または任意となります。
手続きの詳細
新認定制度とは
従来までは「設備」への認定を認められていたものが、新制度では「事業計画」に認定を受けることになりました。
確実に事業を開始できる案件を認定する為、電力会社との接続契約が出来ていることが前提条件になりました。
新認定制度では、事業計画が、①再生可能エネルギー電気の利用の促進に資するもの②円滑かつ確実に事業が実施されると見込まれる③安定的かつ効率的な発電が可能であると見込まれる場合に、経済産業大臣が認定を行う。さらに、この事業計画に基づく事業実施中の保守点検及び維持管理並びに事業終了後の設備撤去及び処分等の適切な実施の遵守を求め、違反時には改善命令や認定取消しを行うことが可能とされている。
引用元: 事業計画策定ガイドライン P1
新認定制度の流れ
認定を取得する順番が、接続契約の締結後に変わりました。
それに従って、電力買取価格が「認定の取得日」を基準に決定になります。
新認定制度と運転開始期限
認定を受けた日を基準とし、一定期間内に運転が開始できない場合、認定の失効や買取期間が短縮となります。
設備の種類 | 期限 | 期間内に運転開始ができない場合 |
---|---|---|
家庭用太陽光発電(10KW未満) | 1年 | 認定の失効 |
産業用太陽光発電(10kW以上) | 3年 | 買取期間の短縮 |
新制度への移行条件
新制度の認定は、稼働中の太陽光発電所、旧制度で認定を受け未稼働の発電所にも適応されます。
下記のようなタイプの発電所は旧制度から新制度への移行手続きをしなければいけません。
接続契約の締結 | 認定取得 |
---|---|
平成29年3月31日まで 電力会社と接続契約を締結済み ※工事負担金契約を含む ※運転開始済みの発電所を含む |
新制度の認定を受けたものとみなす |
例外として以下の場合には、猶予期間が設けられており、この期間内に接続契約が完了すれば、新制度の認定を受けたものとみなします。
状態 | 猶予期間 |
---|---|
平成28年7月1日以降に認定を取得している場合 | 認定日の翌日から9ヶ月 |
電源接続案件募集プロセス等に参加している場合 | プロセス終了の翌日から6ヶ月 |
なお、以上の条件を満たさない場合認定が失効します。
新制度移行後の手続き
新制度の認定には、事業計画の提出が必要となります。
また、未稼働の太陽光発電所の場合、接続契約を証明する書類を、新制度に移行した時点から6ヶ月以内に提出する必要があります。
接続契約締結状態 | 事業計画の提出期限 |
---|---|
平成29年3月31日まで 電力会社と接続契約を締結済み ※工事負担金契約を含む ※運転開始済みの発電所を含む |
平成29年9月30日までに事業計画を提出 |
平成28年7月1日以降に認定を取得し、 翌日から9ヶ月以内に接続契約締結 |
接続契約締結から6ヶ月以内に事業計画を提出 |
電源接続案件募集プロセス等に参加後、 翌日から6ヶ月以内に接続契約締結 |
接続契約締結から6ヶ月以内に事業計画を提出 |
なお、以上の提出期限を守らなかった場合認定が失効します
例外として事業計画の提出が免除される場合
太陽光の余剰買取制度※の適用を受けて固定価格買取制度へ移行された設備を特例太陽光発電設備とし、事業計画の提出が免除されます。 ※平成21年11月1日~平成24年6月30日に施行された制度
事業計画の提出
特例太陽光を除くどのようなタイプの太陽光発電所でも、必ず提出しなければならない大事な手続きです。
提出方法は2種類で、電子申請を利用したインターネット上での手続きと、書式をダウンロードして記入する紙申請が選べます。
くわしくは、「なっとく!再生可能エネルギー」サイトの事業計画の提出ページをご覧ください。
義務の詳細
保守点検・メンテナンスとは
保守点検はどのようなタイプの太陽光発電所でも、必ず守らなければいけない大事な義務です。
設備の機能低下や停止といった不具合、設備の破損とそれを起因にした事故を防止して、太陽光発電事業を安定的に行うため、今回の改正FIT法で義務として定められました。
再生可能エネルギー発電事業の実施において遵守する事項 安定的かつ効率的に再生可能エネルギー発電事業を行うために発電設備を適切に保守点検及び維持管理すること。
引用元: 事業計画策定ガイドライン P2
保守点検・メンテナンスと手続きについて
保守点検の義務化に伴って、保守点検及び維持管理に係る実施計画を策定し、事業実施期間にあたって保管しなければいけません。
また、各メンテナンスごとのレポートの保管も義務化され、求めがあれば提出しなければいけません。
保守点検・メンテナンス計画について
下記は保守点検及び維持管理に係る実施計画で具体的に定めるべき事項の一例です。
- メンテナンスのスケジュール
- メンテナンスの人員配置・体制計画
- メンテナンスの範囲
- メンテナンスの方法
- メンテナンスの安全対策
- メンテナンスの記録方法など
保守点検・メンテナンス基準について
日本電機工業会と太陽光発電協会が、新認定制度を踏まえて作成した、「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」の点検項目を満たしたメンテナンスを行わなければいけません。
標識掲示とは
太陽光発電所の所有者・管理責任者の所在を明確化するために、外部から見やすい箇所に事業者情報を記載した標識を掲示することが定められました。
※20kW未満の太陽光発電と屋根・屋上置きの太陽光発電を除くこの対策は周辺環境・住人への配慮や、第三者が太陽光発電所のトラブルを発見した際に責任者へ連絡を取りやすくすることで、重大事故への発展防止を目的としております。
発電設備又は発電設備を囲う柵塀等の外側の見えやすい場所に標識を掲示すること(20kW未満の太陽光発電の場合を除く。)。
引用元: 事業計画策定ガイドライン P2
標識掲示の基準について
事業計画策定ガイドラインに従った、標識掲示が求められます。
具体的には下記の項目と期限をご参照ください。
– | 項目 | 条件 |
---|---|---|
1 | 素材 | 風雨により劣化・風化し文字が消えることがないよう適切な材料 |
2 | 場所 | 発電設備の外部から見えやすい位置に |
3 | 耐久性 | 強風等で標識が外れることがないように設置 |
4 | サイズ | 縦25cm以上×横35cm以上 |
– | 太陽光発電所の状態 | いつから | いつまで |
---|---|---|---|
1 | これから着工予定の太陽光発電所 | 土地の開発・造成の工事開始後速やかに掲示 | FIT法に基づいて売電を行っている期間が終了するまで |
2 | 平成29年3月31日以前に認定を受けている発電設備 | 改正後のFIT法の認定を受けたものとみなされた日から1年以内 | FIT法に基づいて売電を行っている期間が終了するまで |
標識のイメージ
緊急時に太陽光発電事業者又は保守点検責任者に連絡が取れるよう、「再生可能エネルギー発電事業者」又は「保守点検責任者」のいずれかの項目において、連絡先(電話番号)を記載する。
フェンスの設置とは
太陽光発電所内へ 第三者が容易に侵入すること防止する為に、塀や柵、フェンスの設置が義務付けられました。
※屋根・屋上置きの太陽光発電を除く
この対策は発電所内での事故を未然に防止し、犯罪を抑制することを目的としています。
この事業に関係ない者が発電設備にみだりに近づくことがないよう、適切な措置を講ずること。
引用元: 事業計画策定ガイドライン P2
フェンスの設置の基準について
事業計画策定ガイドラインに従った、フェンスの設置が求められます。
具体的には下記の項目と期限をご参照ください。
– | 項目 | 条件 |
---|---|---|
1 | 設置間隔 | 外部から容易に発電設備に触れることができないように、発電設備と柵塀等との距離を空ける |
2 | 高さ | 構内に容易に立ち入ることができないような高さ |
3 | 素材 | 金網など第三者が容易に取り除くことができないもの |
– | 太陽光発電所の状態 | 設置期限 |
---|---|---|
1 | これから着工予定の太陽光発電所 | 運転開始後速やかに |
2 | 平成29年3月31日以前に認定を受けている発電設備 | 改正後のFIT法の認定を受けたものとみなされた日から1年以内 |
フェンスの設置が困難な場合
下記のような状態においてフェンスの設置を省略できます。
– | 太陽光発電所の状態 | 詳細 |
---|---|---|
1 | 屋根置きや屋上置き 第三者が発電設備に近づくことが容易でない状態 |
塀つきの庭に設置する場合、私有地の中に発電設備が設置され、その設置場所が公道から相当程度離れた距離にある場合等 |
2 | ソーラーシェアリング等 | 柵塀等の設置により営農上支障が生じると判断される場合、塀等の設置を省略できることとする。 ただし、この場合において、容易に第三者が近づき事故等が起こることを防ぐため、発電設備が設置されていることについて注意喚起を促す標識を併せて掲示すること。 |
手続きや義務を怠るとどうなるの
認定が失効するおそれがあります。
事業計画が未提出の場合、認定の即時取り消しということはありませんが、聴聞という弁解の機会を経たうえで、なお提出がなされない場合は認定が失効します。
各種手続きの提出・設備の設置期限のおさらい
– | 手続と義務の名称 | 期限 |
---|---|---|
1 | 事業計画 | 旧制度で認定を取得している場合は『2017年9月30日まで』 2017年4月1日以降で、認定日の翌日から9ヶ月以内に接続契約を締結した場合は 『接続契約の締結日から6ヶ月以内』 |
2 | 運転開始期限 | 家庭用太陽光発電(10KW未満)は1年以内に運転が開始できない場合、認定が失効します。 産業用太陽光発電(10kW以上)は3年以内に運転が開始できない場合、買取期間が短縮されます。 |
3 | メンテナンス | 保守管理・メンテナンスを開始する期限はありませんが、保守点検及び維持管理に係る実施計画を策定し、事業実施期間にあたって保管しなければいけません。 |
4 | フェンス | これから着工予定の太陽光発電所は、運転開始後速やかに設置する。 平成29年3月31日以前に認定を受けている発電設備は改正後のFIT法の認定を受けたものとみなされた日から1年以内。 |
5 | 標識掲示 | これから着工予定の太陽光発電所は、土地の開発・造成の工事開始後速やかに掲示する。 平成29年3月31日以前に認定を受けている発電設備は改正後のFIT法の認定を受けたものとみなされた日から1年以内。 |
これまでのまとめ
最後まで記事をご覧くださりありがとうございました。
改正FIT法は、国民負担の軽減、未稼働案件の増加防止、事故トラブルの防止などを目的として施行されました。
条件や安全対策が厳しく見直され、手続きや追加の設備設置により一時的な負担はありますが、より安全で安定した発電所運営するうえではとても大切な対策であると考えられます。
ご相談ください!
安全で安定した発電所運営のための改正とはいえ、慣れない手続きや、メンテナンスの委託、追加の設備設置は多くの作業を伴ってきます。
私たちは、創業から現在まで多くの産業用・家庭用の太陽光発電所を設計・施工し、管理してきた実績があります。
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